工房しろくま  ほっと一息



事の発端は小学生対象に夏休みにしている児童錬成会でした。
「最近の子供は外であそばんねぇ」 「日なたに出すと動かなくなる」 とのスタッフの意見。
真夏に飛行機やヘリを飛ばして真っ黒になってるのはおっさんだけ・・・。

オリエンテーリングの様な事を毎年近くの広い公園でしていたのですが、近年特に子供が歩かなくなりました。
「なんとかならんかのぉ?」の声に、「紙飛行機飛ばさせたらどうです?」と個人の趣味に走る企画。
これがスタッフ(30〜40代)には好評で、子供にも作れる紙飛行機の選定に入りました。

このスタッフが子供の頃は、駄菓子屋さんに胴体と主翼と尾翼が厚紙でできたばら売りの飛行機が山ほど在ったのです。
時代と共に翼がスチレンペーパーに、重りがプラスチックになり、プロフィールのセミスケール機に発展?していました。
当時、公園や学校の校庭には飛行機を飛ばす子供が必ず居ました。

そういえば、そういう子供がいません。

居ても、実はそういう時代を過ごしたお父さんお母さんの子供だったりします。

そこで・・・・


 教材機にはちょと難しかった機体
久しぶりに二宮康明さんの紙飛行機を作ってみました。
知ってる人は知っている「子供の科学」の後ろの折り込み付録のあれ・・です。いつのまにか「ホワイトウイングス」に名前が変わっていますが、紛れもない「あれ」です。

「子供の科学」と「模型とラジオ」を読んでいた方は絶対作られた経験がお有りのはずです。
「モデルジャーナル」にはもう少し高度なバルサの機体も紹介されていましたが、小学生にはやはり二宮さんの機体です。


製作 題材の確保編

とりあえず、自分で作ってみます。「切り抜く本 よく飛ぶ紙飛行機」で誠文堂新光社さんから、当時(25年以上前)と同じ物が入手できます。
当時の小学生の子供は、この本をハサミでちょきちょきと切って作っていたのですが、おじさんは違います。文明の利器を使うのです。

何を使うか・・・
この切り抜く本、実は一回作ると無くなってしまいます。これが当時小学生だった私にはすごくもったいなく、本命機?は最後まで作らずに居た記憶があります。しかし、もうそんな事で悩まなくてもよいのです。(そういうわけで手元にある「子供の科学」のバックナンバーには未だに手つかずの飛行機が)

当時、この本は大きく見えていたのですが、実はB5版です。とりあえず作ろうと思う機体を選定し、本からページごと切り離します。
この切り離したページをB5等倍でコピーします。(しなくても良いのですが、印刷が黒とは限りませんのでした方が後の処理が楽です)
このコピーした原版を、スキャナーで読み込みます。ちょっとファイルサイズが大きくなりますが、300dpi位で読んだ方が線はきれいです。
読みとり範囲は、B5フルでも良いのですが、部品にかからないよう、少し小さめのサイズで読みとります。
読んだデータは、相当に大きくなりますので、MOくらいに保存する方が良いでしょう。BMPでもJPGでもかまいません。

カラー出力出来る場合は、この原版に直接色を付けてしまいます。ロゴを印刷しても良いでしょう。ピカチューもどきを画像貼り付けもできます。
1パーツだけ着色ならば、自動範囲選択で希望色の流し込みで一発です。失敗しても戻せます。

この画像データを、出来るだけ紙を折り曲げないで給排紙できるレーザープリンター(キャノンのA3機で後面排紙できれば可能です)もしくはインクジェットプリンター(ヒーターを通さないので、よほど極端な給紙をしない機種ならば大半が使えます)を使い、B5のケント紙(以前はケント紙の入手に苦労する事もありましたが最近は文具やさんでB5にカットしてあるものが使えます。官製葉書より少し薄い程度の厚さがあれば使えます)へ等倍で出力します。
プリンターによっては、印字範囲で端がカットされる事もありますので、スキャンの時に余白を削って読んでおきます。

これでいくらでも作れます。もう失敗をおそれる心配はありません。
*あくまでも個人で楽しむ場合に限られます。著作権の事も頭においておきましょう。


製作 製作編

作るのに必要な物は、ハサミ、良く切れるカッター、鉄筆、定規、セメダインC、スティック糊(水性の物よりスティックが良いです)(合成糊不可)ゼリー状瞬間、中粘度瞬間、です。ゴムフックを作るためにクリップとラジオペンチも必要です。

切り抜きはあえて言うまでもないでしょう。久しぶりに作るとハサミが思うようにならないのに気が付きます。
胴体は折り線を鉄筆でなぞっておき、定盤で水平を確認しながらセメダインCかスティック糊で貼っていきます。セメダインCが定番なのですが、最近のスティック糊は乾燥も早くそこそこの強度があり、硬化後はそこそこ硬くなりますので、主翼の補強材の貼り付けや胴体には案外便利です。
きっちり合わせ面を確認したら、しっかり貼り定盤の上で乾燥させます。
この乾燥をゆっくり待てるのが、小学生とおじさんの大きな違いです。
乾燥を待つ間に他の部品も切り抜きます。

主翼と胴体の接合にはゼリー状瞬間を使ってしまいましょう。張り合わせで指先もちょっとひっついてしまいますが、硬化後の強度は段違いです。
しかも・・すぐ着きます。
例題機の様に、翼端上半角でしかもキャンバーが付いた状態の中央翼へ翼端を接着という場合、小学生の頃にはキャンバーもうまく付けられず、接着もうまくいかなくてかなり苦労したはず(私はそうでした)です。
しかし、ゼリー状瞬間であらかじめキャンバーを付けた翼端を接着すれば、あっというまに正確な接着が可能です。
ゴムで飛ばす場合は、射出時に水平尾翼にもけっこう力が加わりますので、水平尾翼もゼリー状瞬間を使います。目視で水平垂直を確認している間に硬化しますので、ねじれにくくなります。

機体によっては機首に「板なまり」が必要になりますが、糸半田で代用できます。
ゴムフックもゼリー状瞬間でしっかり固定します。

1時間ちょっとで完成です。小学生はここでつい飛ばしてみたくなりますが、大人はお茶でも一服。


製作 追加加工編

目視で主翼尾翼の修正をしたら、取り付けの根元へ中粘度の瞬間を染み込ませ補強します。
胴体先端の合わせ目の段差は240番くらいのペーパーで磨いて円滑にします。主翼張り合わせ部のハサミの毛羽立ちが気になる場合は、軽くペーパーをかけます。
胴体の張り合わせの端面へ瞬間接着剤を染み込ませてゆきます。機首は側面もすこし染み込ませます。
硬化したら、もう一度研磨し、角も気持ち落としてやります。

この加工で、胴体は飛躍的に強度を増し、翼がねじれにくくなります。
(というほど大げさな事ではないのですが、すぐにできますので・・・)


製作 塗装編

防水のためにクリアラッカーを軽く塗りましょう、と当時の本にはありますが、最近はこのクリアラッカーが見つかりにくくなっています。
家庭用塗料はほとんど水性になりました。スプレーにはありますが、ごく薄く溶いて筆塗りの方が楽でしょう。

油性のプラカラー(Mrカラー)のクリアを希釈して使います。
刷毛むらなんか出ないくらい、薄めて塗ります。
塗装が必要とも思えませんが、草地で飛ばすと必ず湿気を吸いますので、した方が良いでしょう。


これで完成

調整はセオリー通りです。30年も経てば工作精度も上がりますので、小さい頃ほど調整には苦労しないでしょう。
子供の機体を見てやるときも、自分がその年だった頃を思いだして、ほいほいと調整し、羨望のまなざしを受けて下さい。

広い公園で飛ばしましょう。
飛んだ飛んだ〜 と思っても私のレベルでは15秒も飛びませんから、回収不能になる事もありません。(例題機はもう少しいきそうです)
(飛行エリアを考えてあまり高性能な機体は飛ばさない方が良いでしょう)(回収も楽です)

最近の小学生は、投げ方から教えないといけない場合もあります。キャッチボールさえ未経験な子供がいますので、時代だと思って教えてあげましょう。
案外力任せの大人より、素直な子供の方が飛んだりします。

作っただけでは飛ばない紙飛行機が、調整と飛ばし方でびっくりするほど飛ぶ、この感動を伝えたいものです。


と・・ 近所の友人と広島市中区の中央公園で日光浴に行っているのですが、紙飛行機のベテランの方がいらっしゃり、いろいろ教えてくださいました。
その中の一人の方が、折り紙飛行機をちょっと手を加えた様な機体を考案されており、「あんたもつくってみなさい」と現場で作ったのですが、製作時間5分。オーソドックスな折り紙飛行機の重心より前をかなり重く、剛性も確保した機体で、翼端の曲線状の上半角が方向安定と後縁部の剛性を維持し、前縁中央の捻り下げが絶妙な機体です。(これ・・コンコルドのあれ・ですね)

これが、私の計測で44秒も風のある中を飛びました。ゴムランチなのですが、風向きは一切関係なし、真上に打ち上げます。
一直線に上昇し、頂点で簡単に滑空に入ります。無尾翼?のためか風があっても安定した旋回をし、わずかな上昇風にもひらひらと反応します。
素材は、厚めの新聞広告の紙を往復葉書サイズ(広告用紙を1/4)にしたものです。
後縁部の剛性はあまりありませんが、これが速度があるときにねじれて、一直線の上昇を可能にしているようです。

他のスポーツの練習に来ていた青年たちが驚きの声を上げた機体です。
すごい人達がいるものです。

中国新聞の情報ページに、製作方法がアップされる予定、との事でした。
佐伯さんの機体 こちらからどうぞ > http://www.orikomi.org/orisuma/hikouki_ojisan/image/turuzen-new1.gif

製作者の方、西広島バイパス地御前あたりから廿日市ニュータウンへ入る道の陸橋手前の「つる膳」のマスターだそうです。
実は・・サンプルにもらったこの機体 その「つる膳」の広告でできてました。



こんな機体もあります

福山市にある折り紙ヒコーキ博物館へ戸田拓夫さんの機体を見学に行った時、アンドリュー・デュアーさんの作品も展示されていました。
本の販売もされており、購入して帰ったのですが、これがなかなか良くできています。

紙を曲げて胴体上面のアールを作ってゆく独特の構造ですが、見た目あまり簡単には飛びそうになかったのですが、モノコック?構造の胴体のため軽量な事もあり、想像以上に飛びます。
おじさんの暇つぶしには(画像の機体で1機あたり約2時間)最高かもしれません。ちなみに3機とも元はA4版一枚に部品は収まっています。
何故か低翼の機体が多く、手投げはちょっと難しいのですが、ゴムフックが付いていますのでカタパルトランチが可能です。

画像の機体はそれぞれ切り抜きの本からスキャナーで取り込んだものをエプソンのPMマット紙(A4)へインクジェットで出力しています。
ペーパークラフト用の厚紙で、オリジナルはもうすこし強度のある紙なのですが、これでも翼の細い機体でなければ大丈夫です。

本の紹介



アンドリュー・デュアーさんのペーパークラフトのゴム動力オートジャイロです。オートジャイロのメインローターの左右の浮力の違いをプロペラの反動トルクでバランスを取る、非常に良くできた機体です。
私の調整ではよく飛ぶとは言えないのですが、ちょっと上昇します。
この機体もエプソンのPM用紙(A4)を使っています。生地のままでは少し弱いのですが、プラカラーのクリアをごく薄めに溶いて(筆むらも出ないくらい)1回塗るとかなり剛性が上がります。
一つ上の画像の飛行機も同じ方法でクリアをかけています。重量は少し増えますが剛性が上がり湿度の影響を受けにくく、精度が上がるメリットの方が大きい様です。

キット?として製作するのは簡単?ですが、この機体、プロペラシャフトにゼムクリップを使う以外は、各軸受け部分も含め、すべて紙とつまようじだけです。メタル部分は瞬間接着剤を染み込ませ固めましたが、非常に独創的な構造です。ゼロから作り上げた作者の方の創造力はちょっとすごい物があります。

本の紹介

このオートジャイロの他に、日大の人力ヘリコプターのモデルや胴体の付いた二重反転ローターのヘリなども掲載されています。



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2001/07/04

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