献血する しない
医療機関などで、輸血用の血液はたくさん必要です。病院等でも血液内科などは特に輸血用の血液が必要です。
血液内科、あまり耳にしない科ですが、血友病と言われる血液一般の病気を扱う科です。白血病、再生不良性貧血などがここで治療されます。
献血には、通常の血液採取と成分献血による血小板の採取があります。私自身は身体の大きさの割に検査で試験管に少し採取されただけで気分が悪くなるのですが、家人の病気の治療のために血小板の献血を一時期続けていました。
血小板の採取には、両腕へ2ミリほどの外径の注射針を刺し、片側からポンプで血液を抜き取り、血小板や不純物?を遠心分離で分け、残った成分を片側から体内に戻す作業が必要となります。
細菌感染防止のために、配管?のチューブやパック、針はすべて使い捨て、提供者(ドナー)は両腕に針が刺さった状態で200CCの血小板の採取で約70分間安静にして横たわる必要があります。
自分の身内のためなら我慢できますが、白血病の治療などでは頻繁に血小板の補給が必要となりますのでドナーさんは4〜5名のグループで協力する事が必要となります。
当時、広島の赤十字原爆病院ではこれが当たり前に行われていましたが、ドナーさんへの心理的負担が患者の家族に非常に厳しくのしかかる事もあり、中央の指導で現在は行われていないと聞いています。しかし、ドナーさんの適正があるほど血小板輸血の効果は上がるようです。
「はたちの献血」「献血に御協力下さい!」非常に良い言葉です。しかしいざ人に協力をお願いしようとするとこれほど負担になる事はありません。
時間を束縛します。非常に痛い事です。あまり頻繁に行うとドナーさんの体調にも影響します。
身内であれば血液の掃除くらいに考えられますが、他人にお願いする時はそうはいきません。
実際にドナーさんを捜す事は非常に大変でした。しかもそれは入院したその日に翌日の夕方までに探せと言われました。動転、不安、思い出すのもおぞましい事でした。
たまたま私が青年僧侶会に所属していた事もあり、そちらへお願いすることも出来たのですが、「被爆者」が「白血病」になる事は、話の種にはなっても嘲笑にしかなりませんでした。
同時期に同じ病気で被曝地域でない方がドナーさんを探された時には、好意的に協力されたそうです。
僧侶であっても、現実はそういう意識しかありません。これが現実です。
幸いにもたまたま良く知っていたOBの方に入院の翌朝道で偶然出合い、夕刻お願いした所快諾いただき、最期まで多大な協力を得られた事は感謝しきれないほどのものでした。
今も私の腕には注射針の跡が残っています。父の回復を信じて成分献血室(フェレーシス)へ通った事の証です。父が病気と闘っていた事の証です。
後年、アンディ・フグさんが非常に急性な急性骨髄性白血病で亡くなられました。父も同じ病気でした。
CMで骨髄バンク登録が叫ばれています。
父が闘病していた当時、骨髄移植による5年生存率は30%でした。化学療法だけで5年以上生存する事も不可能ではありませんが、完全な克服には特に若い人の場合は移植が必要となります。
化学療法(抗癌剤投与)は、通常の腫瘍の癌と違い、白血病の場合血管から全身に抗癌剤が回ります。
非常に厳しい治療です。切る事ができる癌がどれだけ羨ましかったかしれません。若くなければ耐えられない治療です。
ちょうどその1年前に、知り合いの家族の方が同様の病気で戦っておられました。たまに経過の話を聞いて、親身に聞いているはずがどこかでは他人事だったのかもしれません。
1万人に一人という発病率の病気が、二人の親で起こるとは誰も思いませんでした。
幸いそちらの方は順調に治療が進み通常の生活に戻られている様です。最近は良い治療薬や治療法もあり通常はなんとかならなくはない病気になったようです。父の場合は至近距離での放射線被曝による発病だったため、悪性のリンパ球が特異なもので通常の治療は無理でした。
骨髄移植で白血病は治る、そういうイメージがあるようですが、移植の成功は30%です。残りの70%の方は拒絶反応や合併症で命を失います。
それでも命がけで移植を闘いながら待っている若者がいます。
もし、何かのイベントで骨髄バンク登録をする事があれば、それは非常にすばらしい事だと思います。しかしもしその方と適正のある方が移植を必要とされた時には、どんな事情があろうとも協力してあげてください。適正のある方は現実的には他にいらっしゃらないはずです。
もし、移植から逃げたら移植を待っている方はまた厳しい闘いを続け待たなければなりません。
移植はドナーさんも移植される方も、同じリスクがあります。無菌病棟での検査、数日間の安静、採取痕も残ります。(方法によりますが)もしかしたら脊髄の神経を損傷する事もあります。
それでも協力してください。
骨髄バンク、本来はそれほど覚悟のいる事です。「献血しようよ!」では済みません。
血液内科病棟から他の階へ降りれば、そこは俗世間です。無期懲役の独房のような無菌病棟の真下の階が産婦人科で毎日新しい命が誕生している、それも現実。
それほど厳しい病気が世の中にはあります。あなたの知らない病室で命がけで闘っている人々がいます。救おうと命がけで闘っている医師もいます。
健康に何も疑問の無い人にとってはどうでもいい事なのでしょう、しかしすぐそこに命がけで闘いを続けている人がいます。
そういう人がいて、闘っている、それだけは頭の隅に置いてください。
2002/03/22
p-bear@ba2.so-net.ne.jp