あんなはなし こんなはなし



星の海

普段の暮らしの中で夜空を見上げる事はほとんど無くなってしまったような気がします。
深夜に帰宅するとき、きんと張りつめた空気に誘われて空を見ることはあっても、星を見ようと思うことは少ないのではないでしょうか。

海に近い場所、人の明かりの静まった深夜、久しぶりに星空を見ました。小さかった頃は人工衛星まではっきり見えたのに、今の自分の目にはぼやけた明かりしか見えなくなっています。
地面に寝転がって星空を見上げます。すると空を上の方に感じていたのに、「自分」というかすかな存在が地球という星に吸い付けられて星の海の中に浮いている事に気が付きます。

目の前の現実として眼下にある星たち、人の尺度ではその先に延々と広がる暗黒の先は推し量ることすら難しいでしょう。
その世界の中に、今、自分が在る。いろいろな生命の中に自分は在る。一人の人間が生きる時間は、本当は瞬きの一瞬に過ぎないのかもしれないけれど、それでも人は、そして命は前に向かって動いている。
先に燃え終わった者、これから現れる者、これから出逢う者、今目の前に居る者。それぞれの願いの向きは違うかもしれない、しかしそれは同じ場所に根付いて輝いていく。
その願いの中に、今、私は生きている。

先に生き終えた者達の願いは痛いほど身にしみる。かけがえのない有り難さのかけらがわかった時、その命の証の偉大さに気が付く。
一人だけで生まれてくるわけではなく、一人だけで生きているわけでもない。
大きな命の縁に気づいたとき、自分の生きる意味が少し見えるかもしれない。
一人の人間は小さい、一人の人間の命は短い、一人の人間の生きる力は小さい、しかしそれは大きな大きな願いの中に支えられている。




20001/02/03

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