あんなはなし こんなはなし



ありがとう

友人の話です。その人物はバス通勤をしているのですが、バスを降りる時、料金を払いながら運転手さんに「ありがとう」と以前は言えなかったそうです。子供や学生さんが「ありがとう」というのは抵抗が無くても、社会人になるとなかなか大きな声で言えず。小声で「ありがとうございます」と言っていた様です。

ある日、近くのバス停で乗って来られる年輩の方が降りる時に大きな声で「ありがとう」と関西弁のアクセントで言われるのを聞き、はっとしたのだそうでございます。

なぜ今まで大きな声で言うことができなかったのか、当たり前の事なのに。
それ以来、大きな声で「ありがとう」が言えるようになったとか。

タクシーを降りる時、高速道路の料金所、コンビニのレジ、「向こうはサービスなんだから」と変な理屈で、無言の人が増えています。会釈さえできない。
頭を下げる、へりくだると損になる、そんな勘違いが増殖しているような気もしなくはありません。自尊心、変なプライド、虚栄。人間が浅くなっているような気もします。
時代の流れ、景気の良いときに日本人が豊かさの代償として捨て去ったもの。

悪条件の高速を走って目的地のインターに着くとほっとして逆に料金所の人と話をしたくなったりもします。特に2輪だと走行中は黙りっぱなしですから、無性にしゃべりたくなります。
私自身、宝塚の知人が高速の料金所で「まいど〜」と言いながら支払いするのを、不思議に思っていたのですが、これも良く考えれば大事な事かもしれません。

ホテルのドアなどで外国の年輩の男性とすれ違うと、別に無理によけたのでなくても「ごめんなさいね」に類する言葉をかけてくれます。
国の習慣、民族性といえばそうですが、相手に対して自分のポジションがどうだこうだに関係なく、自然にそういう言葉が出るのは見習うべきではないでしょうか。

いや・・ほんとは日本人が一番できていた事だったような気もしますが、どうでしょう。

でも 「ありがとう」くらい大声で言える人でありたいものです。
私は、良い友人に恵まれているのかもしれません。




20001/06/22

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