浄土真宗 人に聞けない質問箱
作法や習慣に関しましては、地域や宗派によって様々でございますので、あくまでも安芸教区(広島県西部)の広島市旧市内のものとしてお考え下さい。詳しくは、地元のお寺さんへ、ご遠慮なくお問い合わせ下さいませ。
Q6 浄土真宗の葬儀で「弔辞」に使う言葉は?
葬儀の席で「弔辞(ちょうじ)」を披露される事がしばしばあります。
亡くなられた方への惜別の思いからいろいろな言葉を使われていますが、時に難解な言葉を多用するあまり、本来の意味とは違う用例で使われることもあるようです。
それを少し考えてみましょう。
よくある例
「○○さんの御霊前(ごれいぜん)に申し上げます」
浄土真宗の場合、霊界や霊魂という考え方は無く、亡くなられた方が御霊(みたま)となって天国に旅立っていくという発想はありません。
「御霊」という場合は、仏教というよりは神道の考え方ですから浄土真宗の葬儀で使うにはふさわしい言葉であるとは言えません。この場合は「御仏前(ごぶつぜん)」と述べられる方が適切であると思われます。
「天国から我々をお導きください」
亡くなられた方への呼びかけとしてこのような表現を使われる事があります。天国という発想もまた仏教ではあまり使われない言葉です。一般に使われている「天国」の場合はキリスト教の神の国の場合や、神道の「黄泉の国」と混同されて使われる事が多いのではないかと思います。
また、亡くなられた方に対して、我々を導いてくれること、見守ってくれることを要望する問いかけは、場合によっては故人に対し丁寧で無い場合もありますので、「君の事は忘れません」等の惜別の念におもきをおいた普通の言い方の方が適切であると思われます。
「安らかにお眠り下さい」
これも前者と同様に、亡くなられた方への呼びかけとして使われます。永久の眠りについたという言い方は一般に使われやすいのですが、死者が現世に戻ってこないようにという意図も含まれた言葉ですので、仏様になられた方に対して使うべき言葉ではないと思います。
「ご冥福をお祈り申し上げます」 「幽冥境を越えて」
ご冥福の「冥」という字は「冥土(めいど)」という迷いの世界を示す言葉です。「このよ」と「あのよ」の線引きの意味で使われる言葉ですが、悟りの世界無限の世界に解放され仏となられた方に対して適切な表現とは言いかねます。
「お浄土より御照覧下さい」という言い方の方が適切です。
「草場の陰から」
これもよく聞きます。命尽きた後、火葬なり土葬によって土に埋められます。この姿を「草場の陰から」等と言うようになりましたが、お浄土に還られた方に対しての言葉としては不適切です。「お浄土から」と言われる方が良いと思います。
弔辞というのは、亡き人への弔意の言葉です。大切な人との別れを惜しむ気持ち、その方の生前の功績、そのかたの人柄などが偲ばれるよう、簡潔にまとめられる方が良いと思います。
市販の例文集などで葬儀の用例も出ていますが、大手出版社から発売されているものであっても浄土真宗の作法では不適切な物も多く見受けられます。
多くの場合は、上記の例にあげたような表記の問題ですから、これを置き換えればより適切であると思われます。
もし、弔辞の内容でご確認をお取りになられたいのであれば、お近くのお寺さんにお問い合わせになられるのが確実であると思います。

1999/01/17
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